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フィリピン体験学習だより 第9日目

2019年8月1日 高等学校

長いように思われた9泊10日の旅も、明日帰国の日を迎えます。生徒たちにとってこれほど濃密な10日間はこれまでなかったのではないでしょうか。

生徒たちは、毎晩その日感じたことをノートに綴っていますが、日を追うごとに書く時間が長くなっています。書いても書いても心に浮かぶ想い。しかし、それを的確に言い表す言葉を見つけることは難しく、何かをつかみかけても言葉にしようとすると、それが逃げていくような思いを抱きます。それでも、そうやって言葉を紡ぎ、重ねていく中に少しずつ「自分」が浮かび上がってくるのを感じることができます。

日本にいても日々たくさんのことが起こりますが、落ち着いて自己を振り返る時間がとれることは稀です。想いを言葉にする前に、次から次へと情報が流れ込み、想いを持っていたことすら忘れ去られてしまいます。生徒たちにとって、ゆったりとした時間の中で自己の内面を見つめることは、フィリピンでのたくさんの体験と同じぐらい大切なものだと言えるでしょう。

午前中に行った「分かち合い」では、生徒一人ひとりが「自分の物語」を語ってくれました。

「今まで自分の力を信じて動こうとしていなかった。力強さを身に付けたい。」

「フィリピンの人々が望むことがまだ理解できていないので学び続けたい。」

「フィリピンで学んだことを心で返していきたい。」

「心の中にある複雑な思いをずっと忘れたくない。」

「世界はつながっていることをみんなが理解できるようにしたい。」

分かち合いは2時間半に及びましたが、生徒たちの心にはまだまだ語りつくせない想いが溢れているようでした。

夜、生徒主催によるシスター有田と小張先生に感謝の気持ちを伝える会が開かれました。笑いあり涙ありの素晴らしい時間となりました。特に20人の生徒一人ひとりが自分の夢を語る姿には、SMSFのユースたちが教えてくれた「夢を語る」ということの本当の意味を理解し、心の中に確かな変容が起きたことを感じることができました。

この体験学習を30年以上に渡ってリードしてくださり、今回も生徒たちを変容へと導いてくださったシスター有田、現地でのコーディネートに奔走し、きめ細やかなサポートをしてくださった小張先生に心から感謝いたします。

また、「聖心は一つの家庭」という言葉の意味を教えてくださったSMSFのシスターベスをはじめスタッフの皆様、昼食をともにし「自分の物語」を語ることの大切さを教えてくれたユースたちやそのご家族の皆様、生徒たちを孫のように温かく迎えてくださったクバオの聖心会修道院のシスター方、多様な生き方の可能性を教えてくださった日本大使館やJICAの皆様、社会起業を通して貧困に立ち向かうローズさんをはじめGKonomicsに関わる皆様、NGOによる支援の在り方を教えてくださったベルラーニの皆様、素敵な演奏を聞かせてくださったバーハイ・マパグマハルの皆様、人間の尊厳を守ることの大切さを教えてくださったマザーテレサ修道会の皆様、同じカトリック女子校に通う生徒しての使命を改めて教えてくださった聖テレサ学園の皆様、この宿舎を提供してくださったICMのシスター方、毎日すばらしい食事とメリエンダを準備してくださった食堂の皆様、毎日無事故で運転してくださったドライバーの方、私たちに自分の生き方を見つめる機会を与えてくださったすべてのフィリピンの方々。そして、この体験学習に生徒たちを送り出してくださった保護者の皆様。言葉では言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

私たちにとって、ここがスタートライン。フィリピンでの学びを決して忘れることなく、しかし、焦ることなく「自分の物語」を紡いでいきたいと思います。これで、このフィリピン体験学習だよりも最終回です。

Sa pagmamahal naroon ang Diyos.(愛のあるところに神はいます。)

Salamat Po! Pilipinas!(ありがとう!フィリピン!)

 

 

 

 

フィリピン体験学習だより 第8日目

2019年7月31日 高等学校

午前中は、私たちと同じカトリック女子校である聖テレサ学園(STC)の生徒たちと交流しました。私たちがお世話になっている宿舎も、このSTCの敷地内にあります。

午前7時過ぎ、7年生から12年生までの全校生約1000人が集まる朝礼に招いていただき、歌やダンスによる歓迎を受けました。本校の生徒20名も、代表生徒による英語の挨拶や歌でその気持ちに応えました。

その後、STC生徒会との交流では、スライドによるプレゼンテーションを通して互いの学校を紹介し合いました。日本で練習した時には英語で発表することに自信を持てない様子も見られましたが、この体験学習を通して感じたこと、考えたことが生徒たちの心を強くたくましくしてくれたのでしょう。相手に「伝えたい」という思いが届く発表となりました。STCの先生からも、自信をもって意見を言えていたと評価していただきました。

STC生徒会の言葉や姿からは、恵まれた環境にある者が果たすべき強い使命感が伝わってきました。学んだこと、育んだ自分の個性を何のために使うのか。STCと同じカトリック女子校である本校の生徒は大きな刺激を受けたことでしょう。

午後からは、マニラの中でも最貧地域の一つであるナボタスに向かいました。開発が進み、多くの家屋が取り壊されたため以前ほどの規模ではなくなっていますが、それでもバスの車窓からは、今にも崩れそうな家が立ち並ぶ光景が飛び込んできました。底の見えない貧困の穴をのぞいているような気持ちになりました。わかったつもりになってはいけない、知っているつもりになってはいけない。そう思いながらナボタスを後にしました。

その後、マザーテレサが始めた修道会を訪問しました。ここでは、シスターたちが、親に捨てられた子供や重度の障害を持った子ども、身寄りのない老人たちのケアをしています。

子供たちは生徒を見つけるとうれしそうに近づいてきました。この子供たちは、誰かに思う存分抱きしめてもらったことはあるのでしょうか。悲しい時、誰かにずっと寄り添ってもらったことはあるのでしょうか。名前を呼ぶだけでうれしそうに笑う障害をもった子供の姿が忘れられません。

老人たちも若い生徒たちの訪問を大変喜んでくれました。生徒たちは食事の補助をしたり、日本の歌を歌ったりしました。生徒の手を握る老人の表情からは、自分と関わってくれる人がいることの喜びが伝わってきました。

宿舎の外に出て人と関わる活動は、今日で終わりです。明日はこの体験学習全体をふりかえり、それぞれの学びを分かち合います。

 

フィリピン体験学習だより 第7日目

2019年7月30日 高等学校

7日目を迎えました。今日は、様々なレベルからフィリピンの「今」にアプローチする取り組みについて学びました。

まず訪れたのは日本大使館です。外交官として活躍されているお二人から外交官の仕事について説明を受けた後、生徒たちの質問に答えていただきました。

「外交官を志したきっかけは何か」「求められる資質は何か」「自分の考えと政府の考えが異なることはないのか」など外交官という仕事に関するものから、「日本にしかできないことは何か」「フィリピン政府は貧困をどう考えているのか」など外交官から見た現状に関するものまで、質問は多岐にわたりましたが一つひとつ丁寧にわかりやすく答えてくださいました。

「外交においては、日本の立場を主張するだけではなく、まず相手を知り、相手の立場から考えることが何よりも大切。それは普段の生活でも同じです。」と教えていただきました。政府レベルのアプローチと言えども交渉するのは人と人です。外交官の方々の人柄と日々の努力が、日本とフィリピンをつないでくださっていることを初めて知ることができました。

午後からはJICA(独立行政法人国際協力機構)フィリピン事務所を訪問。日本のODA(政府開発援助)を実際の現場で実施する方々の取り組みを教えていただきました。地球規模の課題が増え、国と国の相互依存がますます強まる中で、日本さえよければいいと考えるのではなく、関わり合う国々の安定を図ることが、日本にとっても相手の国にとっても利益になることを学びました。組織の概要を伺った後、経験豊かな4名の職員の方々を囲んで具体的な体験談を聞かせていただきました。体験談を聞きながら、自分の将来について相談する生徒の姿も見られました。

夕方、ローズさんというフィリピン人女性に会いに行きました。彼女は「GKonomics」という団体を設立し、貧困のために社会から取り残された人々の自立を支援しています。また、彼女の理念に賛同する社会起業家たちのサポートも行っています。

かつてローズさんは、アメリカ合衆国初のフィリピン人女性判事となり、まさにアメリカンドリームをつかんでいました。しかし、ある時「夢を描くことさえできない人たちのために働くように」という神の呼びかけを感じ、判事を辞め、家や車を売り払いこの活動を始めました。そして、貧困に喘ぐ人々のための仕事を作り、社会の経済活動の中に彼らを取り込むシステムを作ったのです。

ローズさんはこう語ります。「私の周囲には『人生を無駄にしたね』と言ってくる人もいます。でも、私は社会正義のために働くことで、神の仕事を手伝っていると思っています。そして、神の祝福を受けていることを感じています。」と。

人のためにできることはあっても、すべてを捨て、人のために生きることは難しいことです。ローズさんの生き方から、改めて幸せとは何か、自分はどう生きていくべきかを考えさせられました。

日本の企業から研修制度を利用してローズさんの事業に参画している藤崎さんとの出会い、また、フィリピンの伝統文化を生かした鞄作りを通して約360世帯の仕事を生み出しているAKABAという会社を設立したフィリピン人社会起業家EJさんの話も、生徒たちの視野を広げる興味深いものでした。

日本大使館の外交官の方々やJICA職員の方々、そしてローズさん。今日出会った方々は、それぞれの立場からフィリピンの「今」にアプローチされています。生徒たちは、世界と自分とのつながり方について今までにない多様な可能性を感じたことと思います。

     

フィリピン体験学習だより 第6日目

2019年7月29日 高等学校

今日は街の喧騒を離れ、マニラ南部の避暑地タガイタイに出かけました。美しいタール火山とそれを取り囲むカルデラ湖のほとりに建つ緑美しい黙想の家で、これまでの体験をふり返りました。

シスター棚瀬から「これまでの五日間で強く心に響いたことは何ですか。なぜそのことが心に響いたのでしょう。そのことを通して神様はあなたに何を問いかけていますか。そして、これからの自分の生き方について何を教えてくれているでしょうか。」と問いかけられた生徒たち。一人ひとりが敷地内の好きな場所に散らばり、1時間半ほど沈黙の中で自分の心を見つめました。

午後からは小グループに分かれての「分かち合い」を行いました。わずか5日間のうちに、これまで持っていた自分のものさしでは到底測ることのできない現実に直面した生徒たちの口から、熱い思いが溢れ出しました。

「昨日ユースに将来の夢を聞かれたとき、私は職業名しか答えられなかった。でもユースは、自分がなりたい職業を通して、誰のために何をしたいのかを話してくれた。そういうのが本当の夢なんだと教えられた。」

「日本では、ぼんやり生きていても親のおかげで何とか生きていける。自分も本当にやりたいことを見つけないといけないと感じた。メディアを通して伝わるうわべのフィリピンではなく、笑顔で力強く生きる彼らの姿を日本に帰ってから伝えていきたい。」

「幸せってなんだろうと考えさせられる。経済格差を生み出す今の社会のシステムを、自分たちの世代で根本的に見直す必要があるのではないか。」

ある生徒は、「これだけの現実を見ても、まだ自分中心の考えから抜け出せない。そんな自分に対して残念に思うし悲しくなる。」と複雑な胸中を涙を流しながら語りました。他の生徒から「まずは知ることが大切。みんなそこから考え始めるんだから大丈夫だよ。」と声をかけてもらいました。

決して美化できない過酷な貧困。その現実と向き合う自分の心の中に生まれる葛藤もまた、美化したり目をそむけたりする必要はありません。大切なことは、その葛藤をずっと胸に抱き続けることではないでしょうか。それが、フィリピンで出会った人たちのことを忘れずに生きていくということなのだと思います。

残り四日となったこの体験学習。一日一日を大切に過ごしていきます。

 

 

 

フィリピン体験学習だより 第5日目

2019年7月28日 高等学校

この体験学習も折り返しの五日目を迎えました。今日は、昨日訪れた「みこころの家」のユース(この施設で教育を受けた中学生・高校生)と交流しました。

午前中、生徒たちはペアになり、ユースの家を訪問。彼らの家族とともに話したり昼食を食べたりしました。昨日は外から見るだけだった家に入り、実際の生活を目の当たりにすることで、感じることも多かったようです。

午後からは「みこころの家」に集まり、ユースとの交流会が開かれました。ユースの発表は「自分たちの物語」をテーマに、一人ひとりのユースがどのような思い、どのような夢をもって生きているのかを、動画やダンス、歌などで力強く伝えるものでした。彼らの家がどれほど貧しいかを見てきたばかりの生徒たちは、そのような現実の中でも前を向いて生きていくんだという彼らの強いメッセージに心を揺さぶられたようで、生徒の頬を涙が伝いました。

「みこころの家」を運営するシスターベスは生徒たちに次のように語りかけました。

「ネットでフィリピンを検索すれば、いろいろな数字が出てくるでしょう。しかし、それが本当のフィリピンではありません。数字やデータは大切。でも、私たちは数字で表せない存在です。みなさんが出会いを通して、フィリピンの若者たちのことを知るということが大切です。テクノロジーを通して得たものは忘れてしまいます。でも、一緒に食べ、一緒に笑い、一緒に泣く。そうやって知った一人ひとりの物語は忘れません。親愛なる日本のみなさん。みなさんはたくさんの機会を与えられ恵まれています。自分がしたいことをする時に、どうぞ本当にそこに生きる人々の生活、物語を知ることに努めてください。何を食べているのか、何を学んでいるのか、どんな夢を持っているのか、そして、どうやって死んでいくのか。そうすることで、私たちは一番大切なものを学ぶことできるからです。」と。

そして、「若い皆さん。また、かつて若かった皆さん(笑)。絶え間なく夢をもって生きていきましょう。とてもたどり着けないと思うこともあるでしょうけど、それでも夢を持ち続けましょう。」と参加した全員に笑顔で語りかけてくださいました。

その後、小グループに分かれてのフリートークでは、互いの夢を語り合い、一人一人の物語を知ることができたようです。生徒たちにとって、モンタルバンでのこの二日間は、これからの人生において大きな意味をもつ二日間になることでしょう。

宿舎への帰り道、聖ドミニコ教会に立ち寄り、タガログ語でのミサに与り、モンタルバンでの活動に思いを巡らせました。

 

フィリピン体験学習だより 第4日目

2019年7月27日 高等学校

早朝、ルソン島北部で地震がありましたが、生徒たちが活動している地域での揺れはなく、予定通り活動しています。皆様、どうぞご安心ください。

今日は、宿舎からバスで北へ一時間ほどのところにあるモンタルバンという小さな町に出かけました。

ここにはSMSF(聖マグダレナソフィア基金)が貧困家庭をサポートするための施設「みこころの家」があります。幼稚園に通えない子供のためのプログラムや、小学生の識字率や読解力を上げるための補習プログラムなどがあります。また、母親たちを集めて裁縫を教え、日本の聖心の子供たちが使う音楽バッグなどを作ることで収入を得るという、家計を支える仕組みも長年続けられてきました。SMSFを運営するシスターベスは、「神が私たちに何を望んでおられるのか。常に自分に問いかけることが大切です」と生徒たちに語りかけました。

施設に通う子供たちが住んでいる地域を歩くと、そこには想像をはるかに超えた厳しい現実がありました。大雨のたびに川が増水し一階部分が浸水する家。下水道が整備されておらず不衛生な水が流れる路地。住むことさえままならない中で、子供の教育が後回しにされる理由を、十分過ぎるほど理解したことでしょう。午後、施設にやってきた幼稚園児や小学生の笑顔は、昨日のベルラーニ同様、世界共通の輝きがありました。日本からやってきた高校生の前で自分たちの歌を披露し、喜んでもらう。そのことが彼らの自信となり、貧困の中で失われた自尊心を高めることにつながるそうです。

施設にはお祈り箱というものがあり、子供たちは自分が書いたお祈りを入れます。そこに書かれた祈りは、必ず神様や周りの人への感謝の言葉から始まるそうです。子供たちの姿から、感謝する気持ち、希望をもつことの大切さを教えられるのだと、シスターベスはおっしゃいました。

自分は何をなすべきなのか。貧困の現実に触れる中で、生徒たちの考えは深まっています。

 

   

 

 

 

 

フィリピン体験学習だより 第3日目

2019年7月26日 高等学校

三日目を迎えました。今日も快晴が続いています。

午前中は、アメリカ軍記念墓地を訪問。美しい芝生が広がる広大な敷地に、整然と立ち並ぶ無数の白い墓標は、70年以上前にこの地であった激しい戦闘の記憶を静かに伝えています。「歴史は事実と解釈。誰の視点から解釈するかによって、歴史は変わる」シスター有田の言葉に、自分がいつも見ている日本だけではなく、異なる視点から日本を見つめることの大切さを感じたようです。

その後、フィリピン経済の中心地マカティに行き、グリーンベルト教会で昼のミサに与りました。忙しい仕事の合間を縫ってミサに与る人の多さに、フィリピンの方々の信仰心の厚さが表れています。昼食はフィリピンで一番人気のファストフードチェーン・ジョリビーでいただきました。

午後からは、ストリートチルドレンのための施設を運営するベルラーニという団体を訪問。ストリートチルドレンが置かれている過酷な現実を知るとともに、支援のための多様な方法についても学びました。小さな子供たちの屈託のない笑顔に、生徒たちの方が元気をもらったようです。日本に生まれた自分とフィリピンに生まれたこの子供たち。生まれる場所、生まれる家庭を選ぶことはできません。だからこそ、何かを「してあげる」ではなく「しなければならない」ということを、少し感じることができたように思います。

夕食はフィリピンの聖心会修道院のシスター方とともにし、楽しいひとときを過ごしました。

 

  

 

錬成会を行いました。

2019年7月26日 高等学校

10年生は、7月16日(火)から18(木)に滋賀県の琵琶湖畔で、2泊3日の錬成会を行いました。

1日目は、本校卒業生の仲野好重先生のお話をお聞きし、その後グループに分かれてセッションを行いました。
2日目は、セッションの後、夕の祈りでキャンドルを見つめながら、錬成会で気づいたことを心静かに振り返りました。
3日目は、この3日間を通して考えたことをグループで分かち合った後、カトリック大津教会を訪れ、祈りの時間を持ちました。

様々なセッションを通して、自己を見つめ、集団として成長するきっかけを見つけることができた錬成会でした。

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