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【校長室より】丘の学び舎 その4

2011年6月10日 14:10

「豊かな沈黙の世界」

 中間試験が近づき、今年度の学校生活も四分の一が終わろうとしています。自分自身を振り返る節目の時期ですね。昨年度に引き続き、「豊かなことばの世界の中で」という学校目標のもと、皆さん一人ひとり、「ことば」を様々な観点から味わい、深めてきていることと思います。現代では「ことば」といえば、「プレゼンテーション」「ディベート」「スピーチ」など、発信することに重きが置かれがちですが、実はそういった活動の背後には必ず、「読む」「聴く」「書く」「考える」「深める」といった沈黙の作業があるということに気づいていますか。「豊かなことばの世界」には、「豊かな沈黙の世界」が欠かせないのです。

 ところで、「最も聖心らしい学校の雰囲気は何ですか。」と問われるならば、私は真っ先に「沈黙です。」と答えます。210年続いてきた聖心女子学院の教育の聖心らしさはそこにあります。もしこの小林聖心から「沈黙」の雰囲気が消えるとしたら、それはもう聖心の学校でなくなるといっても過言ではありません。

 昨年、読売新聞の「時代の証言者」という欄で、作家の曽野綾子さんの記事が連載されていました。その4回目では、ご自分の受けた教育について書いておられます。幼稚園から大学までずっと聖心女子学院で過ごし、聖心の教育が身にしみておられる曽野さんは、ご自分の受けた教育の中で最も大切なこととして、「沈黙」について語っておられます。「トイレで子どもたちがおしゃべりすると、シスターから『シーッ!』と怒られる。目的のある所で目的以外のことはするな。トイレはおしゃべりする所じゃないと言われた。」「私たちは沈黙を教えられました。廊下を歩く時も沈黙。廊下は歩くところでしゃべるところではない。電車も沈黙。大きな声で騒いだり走ったりするな。」
 なぜ、そんなに沈黙が大切なのでしょうか。曽野さんはこう仰っています。「沈黙に耐えられない人間というのはろくなことがない。」と。つまり、しっかりとした人間になるために、沈黙の時間はとても大切な意味を持つということですね。なぜなら、沈黙の中でこそ「自分を深く考える」ことができるからです。「話すことは、会話の中で相手を見たり、自分の位置を決めたりすること。沈黙は誰と比較するのでもなく、自分はどうなるのか、どうするのかを考える」ことだからです。人のことばかりが気になってうろうろし、つい無駄なおしゃべりで時間を埋めたりしていませんか。沈黙の中で、しっかりと自分の足で立ち、自分はどう考えるのか、自分は何をすべきかを見つめることを通して、自分自身は出来上がっていきます。また同時に、「他人の静寂も侵さない」ために、沈黙は重要です。他人の静寂を大切にすることは、その人を大切にして尊敬を表す、最も美しい態度であると言えます。

 今年度も、皆さんがそれぞれの年齢にふさわしい「沈黙の豊かさ」を味わい、しっかりとした人間に成長していってほしいと、心から願っています。



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