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【校長室より】丘の学び舎 その6

2011年9月15日 09:58


「もの : 者と物」

 今日は、「もの」についてお話したいと思いますが、皆さんは「もの」ということばを聞いて、どんな字を想像しますか。日本語はとても不思議で、人間の「者」も物質の「物」も、「もの」という同じ音で表現します。他の言語では多分ありえない、日本独特の文化の表れだと思います。同じ音ということは、つまり、共通点があるということですね。それは、物にも、人間にも、魂が宿っているということだと思います。

 「人間には神様からいただいた魂があるけれど、物は生物でもないし、人間とは違う」と思うかもしれません。でも、物には作った人の魂が込められているのです。物は、ただ工場でロボットによって作られたわけではありません。日本には「ものづくり」という伝統がありますが、小さな部品の一つにいたるまで作った人の思いや労苦が染み込んでいます。また、物は、それを使う人によって魂が宿るようになります。東日本大震災の後、あの瓦礫の中で、物が叫んでいたように感じませんでしたか。「私を使ってくれていた人、私を見つけて!」と。被災された方々は、家の柱の一本でもいい、文房具の一つでもいい、何でもいいから何か出てきてほしいと探し回られたと思います。物は使う人の魂が込められ、かけがえのないものとなっていくのでしょう。

 小林聖心は何よりも魂の教育を大切にし、出会う相手をかけがえのない存在として思いやることのできる人を育てたいと願っています。それは同時に、人だけでなく、物と丁寧にかかわり、物を大切にする心も育ててほしいということです。人が物をどのように扱っているのか。それを見れば、その人が他の人とどのようにかかわっているのかも見えてくることでしょう。この頃のように、物はただ役に立てばよい、古くなったら使い捨て、次のものと交換すればよいのだという風潮は、人を人とも思わなくなることにつながっていくのではないでしょうか。

 学校の校舎のことも考えてみてください。昨年からこの夏にかけて、高校はもちろんのこと、中学校も色々なところが新しくなりました。私はその工事の様子を日々眺めながら、働いてくださっている方々への感謝の気持ちで一杯になりました。皆さん、ただの仕事として働いてくださったわけではないのです。真夏の暑い時も、冬の寒い時も、騒音や埃の中で、「いいものを造ろう、休み明けには生徒が使えるように頑張ろう」と、心を込めてくださっていました。また、その陰には、設計してくださった方々の思いも忘れることができません。学校の本館は、80年を越える、魂のこもった建物です。また、新しくなった所は、皆さんがこれから心を込めて使い、後輩のために魂を残していくことでしょう。数年前、もう70歳に近い卒業生の方々が学校を訪問なさった時、「ああ、懐かしい。」といって、階段の手すりや廊下の壁を手でなでておられたのが、とても印象深く残っています。皆さんもそんな卒業生になっていくのでしょうか。

 「者」と「物」。どうぞ、身の周りの小さな物を丁寧に扱い大切にする心を身につけることで、人への思いやりの心を育んでいくことができますように。そして、互いをかけがえのない存在として大切にする心が、物との関わり方へとさらに広がっていきますように、心から願っています。



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