わたしが歩いてきた道 -小林聖心女子学院が教えてくれたこと-

玉山 能子さん

玉山 能子さん 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 有人宇宙ミッション本部 法務担当

プロフィール

2006年卒業、78回生。2010年関西学院大学法学部政治学科卒業後、JAXA(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)に就職。種子島宇宙センターの紹介やロケット打上げ時の報道対応等、広報活動に努める。その後、有人宇宙ミッション本部で法務担当として、主に国際宇宙ステーションにおけるJAXAの活動に関する契約・法務業務に従事している。

生活習慣や礼儀、心遣いなどに対する細やかなご指導が、今につながっています。

小林聖心への入学を決めたのは母でした。兄と弟に挟まれ、たくましく育ちつつあった私を、少しでも女性らしくと考えて、学校訪問したときのこと。音楽室から聞こえてきた歌声に「娘もこんな風に育ってほしい」と思ったことが、小林聖心を選んだきっかけだったそうです。

小学校では、先生方が学校生活の習慣や態度について、細やかにご指導くださったことを、今でも印象深く覚えています。たとえば、掃除の時間には正しいほうきの使い方を教えてくださったり、図書室では本を「お借りします」か「お返しします」か、どちらかはっきり言うことを習慣づけてくださったりと、数え上げればきりがありません。思い返せば、多くの児童に何度も同じことを注意するのは大変だったことでしょう。それでも先生方は皆、とても優しく根気よく、私たちに向き合ってくださいました。

基本的な生活習慣や礼儀、周りの人への配慮など、家庭内だけでは行き届かない部分までご指導いただけたことに、母はとても感謝しておりました。私自身、今でも生活をするうえで時折思い出し、姿勢を正すきっかけとしています。

玉山 能子さん写真1

小学1年生の頃は恥ずかしがり屋で、写真はほとんど笑顔のかたいものばかりです。その後、性格はもう少し活発に。

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中高6年間所属したソフトボール部での活動は大きな思い出。先輩と後輩がとても仲の良い倶楽部でした。(右から4番目)

「里親募金」に関心を持ってもらうために、ネパールやバングラデシュにいる里子の近況や各国の情報をまとめ、掲示しました。

生徒を信頼し、尊重する教育で主体性や協調性が自然と身につきました。

「女性だから」と遠慮しなくていい環境は、生徒にのびのびとした学校生活を与えていたと感じます。一方で、行事の運営から力仕事まで、すべて女性だけで行うのが当たり前。小林聖心では、年間を通して多くの学校行事があり、その内容も学校独自のものから、文化系、体育会系のものまで多岐にわたるため、生徒全員に、それぞれが得意とする分野でリーダーシップをとる機会が与えられていたように思います。

私自身、中学校の生徒会で議長をしていたときに手がけた「里親募金」の奉仕活動では、その実施から集計まで、運営全般を任されていました。そこでは生徒に関心を持ってもらうため、ネパールやバングラデシュにいる里子の近況や、各国についての情報、集めた募金がどのように使われているかのレポートを校内に掲示したり、定期的に情報誌を作成・配布したりと、副議長の後輩と力を合わせ、工夫したのをよく覚えています。

今にして思えば、先生方から指示や強制を受けたことは一度もなく、すべて私たちの裁量に任されていました。その結果、主体的に行動する能力や、他者と協力するために必要な能力、自分で優先順位を考えながらすべきことに対応する能力が、自然と身についたと思います。

個々それぞれが秀でている部分を大切にされたことが、夢を見つけるきっかけに。

中学時代、聖心女子大学の卒業生で、国際的に活躍している女性がいると先生から伺い、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんの存在を知りました。

小学生のときの「おにぎり募金」(※)や、中学生のときの「里親募金」をはじめとする、国内に留まらないさまざまな奉仕活動を通して、自然と国際社会に関心を持ってはいたものの、緒方さんの存在を知り、これまで辿ってきたことが一本の線でつながったかのような運命を感じました。緒方さんは在任中の10年間で、さまざまな人道危機の最前線で援助活動を行いました。その際、「人の命を助ける」ことを判断の基準にし、従来の行動規範を変えて、新しい難民支援の枠組みを作りあげたそうです。妻であり母でありながらも国際社会でも活躍できる女性が先輩にいらっしゃるということに大変感銘を受け、その後の私は目指すものが決まったかのように、大学時代には、国際関係や国際支援に関わることを学びました。就職活動では、国境にとらわれず携われる仕事を目指し、結果的に、日本や国を越えた「宇宙」を軸に仕事をすることになりました。

小林聖心の先生から緒方さんの著書を読むよう勧められ、「世界に目を向けなさい」という言葉をいただいたことが、今につながっています。同級生が皆、さまざまな職業に就き、誠実に活躍しているのは、机上の学習だけにとらわれず、個々それぞれが秀でている部分を大切にする機会が与えられていたからだと思います。

※毎週金曜のお弁当をおにぎりだけにして、おかず代を募金する活動。

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職場での一コマ。種子島宇宙センターで広報活動に従事した後、現在は有人宇宙ミッション本部で法務を担当しています。

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学院祭では、有志でテーマに沿った調べ学習をし、発表しました。

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クリスマス前に、シスターのお手伝いで聖堂を飾り付け。華やかなだけでない本当のクリスマスの意味を知ることができました。

知識の習得に留まらない、人格を形成する教育を受けられました。

小林聖心の魅力は、恵まれた豊かな環境の中、長い年月をかけてゆっくりと、知識の習得に留まらない、人格を形成する教育が受けられることだと思います。授業だけでなく、日常生活や学校行事など、学校生活のどの部分を切り取っても、「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」という教育方針が、自然と生徒に深く浸透するよう工夫されていたように感じます。その方針を私たちに伝えようと、先生方も細やかで丁寧なご指導をしてくださいました。

卒業生は皆、自身の幸せが、物質的な豊かさだけではなく、周りの人の支えによって成り立っていることを理解していると思います。小林聖心で得た友人たちは、卒業した今でも、困ったことがあれば自分のことのように親身になって助けてくれる、かけがえのない家族のような存在。思いやりのある感性豊かな友人に恵まれたことが、私にとって何よりの財産です。

社会人になり、それまで自分がどれほど学校や家庭に守られ、大切に育てられてきたかがよくわかりました。今度は自分自身が少しでも社会の役に立てるよう、ひとりの人間として自立し、小林聖心で学んだことを大切にしながら、日々努力していきたいと思っています。

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