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丘の学び舎 その119

2021年4月26日 校長室より

初夏を思わせられる陽気となってきました。このところ、どんどん春が短くなっているように感じます。これも温暖化のせいでしょうか。
毎朝の私の楽しみは、校門から校舎までの坂道を歩きながら、ちょうど登校してくる小学生と話をすることです。先日、前を歩いているグループの話を聞いていると虫の話でした。声をかけてみると、どうやら3年生のようです。「みんなダンゴムシが大好きで、一杯集めて遊ぶ」とのこと。そして、その中の一人が、「ダンゴムシを飼っていたんだけれど、死んでしまった・・・」と残念そうに呟きました。ダンゴムシを飼うという発想のなかった私は、新鮮な感動を覚えました。
小林聖心には、堤中納言物語「虫愛づる姫君」を彷彿させる女の子が沢山います。学校敷地内のロザリオヒルは生き物と出会う格好の場で、「春みつけ」「秋見つけ」のみならず、生活科の一環として度々出かけ、植物、昆虫等に触れることができます。ロザリオヒルだけではありません。森の中に佇むような校舎では、授業中、様々な鳥のさえずりに、思わずうっとりすることがあります。小林聖心では、自然はいつも身近です。
理学博士で生命誌研究者の中村桂子さんは、著書「『ふつうのおんなの子』のちから」の中で、「『人間は生きものであり、自然の一部である』という事実を大切にする社会であってほしいと願ってきた」と仰っています。そして、「ふつうのおんなの子」は、本質的に弱さを抱えた生きものである人間を受けとめ、生かすことができる力を持っており、21世紀は、そういうおんなの子の考え方が大切にされる社会になっていくのではないか、と述べておられるのがとても印象的です。
小学生の頃、あれほど虫を愛でていた子供たちが、中学生になると、急に虫を避けるようになります。それも、自然な成長のプロセスなのでしょう。しかし、小さい頃に虫を愛でた体験が、「人間という生きものを大切にする社会」の実現に向けて力を発揮する準備となりますよう、願わずにはいられません。

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