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丘の学び舎 その134

2021年8月9日 校長室より

猛暑続きの中、少し涼しい気分を味わった先週の出来事をお話したいと思います。クラブ活動も最後の日のことです。茶道部のお招きに与り、久しぶりにお茶室に座り、生徒のお点前を頂戴しました。セミの声が心地よい、学校のキャンパスとは思えない静寂がお茶室に広がっていました。
四季の変化を巧みに表現する日本の文化。茶道には、もちろん四季折々の楽しみ方がありますが、今回、涼しさを演出する様々な工夫が茶道にあることを知り、深い感銘を受けました。コーチの先生が丁寧に説明してくださったお陰です。
まず、いただいたお菓子は、夏そのものともいえる西瓜をあしらったぜりーでした。口にするのがもったいような美しさです。西瓜を目にしただけで、気分は変わります。お茶を頂いた器は、薄手の焼き物で、やや浅めでした。器によっても、涼しい気分を味わえるのだということを実感できました。さらに、夏には特別な楽しみ方があるようです。平水指(ひらみずさし)に水を張り、涼しさを醸し出すようにします。子供の頃、縁側から打ち水をした時のような感覚を思い出しました。しかも、その平水指の蓋の上に、袱紗(ふくさ)で折った蝉を飾るのだそうです。朱色のかわいい蝉が平水指の蓋の上にちょこんとのっている様子に、茶道の遊び心が感じられ、外から聞こえてくる蝉の声とも相まって、とても心が和みました。
第五波といわれる感染急拡大のニュースに、心も塞ぎがちな二度目の夏を迎えました。オリンピックとコロナの狭間で、悶々とした思いは拭えない今日この頃です。しかし、日常生活の中に自然を取り入れたり、ちょっとした遊び心をもって心を豊かにしたりすることはできるのではないでしょうか。お茶を頂きながら、日本の伝統文化が内包する知恵の奥深さに、今更ながら、思いを馳せたひと時でした。

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