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丘の学び舎 その147

2021年11月8日 校長室より

ロザリオヒルを歩いていると、キンモクセイの甘い香りに包まれます。普段は何の木だかすっかり忘れている生垣ですが、オレンジ色の花でいっぱいになると、キンモクセイの存在を再確認することになります。キンモクセイの開花時期は通常9月~10月といわれていますので、今年はかなり遅れたのでしょう。つい、一週間ほど前から、香りに気づくようになりました。
季節が移ろう中、中学校校舎の廊下には、9年生の美術作品、水墨画が展示されています。「私が好きな季節」をテーマに、水墨画の濃墨・中墨・淡墨といった墨色の違いや、にじみ、筆の払いなどが醸し出す表現を楽しみながら、好きな季節の風物を描いています。毎年、なかなかの傑作ぞろいに、足を止めて味わっています。掛け軸にでもかけたくなるようなお気に入りが見つかったりします。
水墨画は、東洋が生んだ世界に誇る絵画表現です。黒と白のモノトーンの世界は、日本人の心に深く根付く感性にも通じるようです。茶道や華道と同様、落ち着きと静けさの世界に誘ってくれます。確かに水墨画は日本人を魅了し続ける絵画です。
私は水墨画が秘める「曖昧」の美しさに魅かれます。日本人の国民性は、よく曖昧という言葉で表現され、「曖昧」であることは、欧米の文化から見れば、掴みどころがないといったネガティブなイメージに繋がりがちです。しかし、実際のところ、物事は、それ程はっきりと、白と黒とに分けることができないのではないでしょうか。白と黒の間には、数えきれないほどのグラデーションがあります。白でも黒でもない、微妙なグラデーションを理解することは、わかりにくいことをすぐに判断しないで思いめぐらすという姿勢に繋がり、自分とは異なる多様な他者を受け入れる大きさにも繋がるように思えます。
9年生が水墨画にチャレンジすることは、その意味で、とても貴重な経験だといえるでしょう。StageⅢとして、少しずつ大人に向かっていく9年生の成長を願いながら、今年も水墨画を楽しみました。

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