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校長より
2018.09.25
丘の学び舎 その28

「小学校便り9月号」より

創立者生誕の地で学んだこと

猛暑の夏は終盤を迎えつつあるのでしょうか、秋風がとても待ち遠しい今日この頃です。始業の日、子供たちは少しお姉さんになった顔つきで元気に挨拶をし、学校生活が再開しました。休み明けはいつも、「お帰りなさい」という気持で子供たちを迎えます。長い休暇中、学校とは異なる場での経験を通して一段と成長した子供たちが学校生活に戻り、また新たな学びの中で成長していく、そんな学年の後半にいよいよ向っていきます。

ところで、この夏、私は小林聖心や姉妹校の先生方と共に、創立者聖マグダレナ・ソフィア縁の地を巡る旅に出かけ、たくさんの新しい出会いと気づきを頂きました。そのすべてをこの紙面で分かち合うことはできませんが、最も印象深く心に響いている、創立者生誕の地ジョアニーで学んだことについてお話したいと思います。

ジョアニーはパリの南東、車で2時間程のところにある、のどかなブルゴーニュの町です。産業といえばぶどう酒作りが主で、今も、丘一面にブドウ畑が広がっています。創立者の父親はぶどう酒の樽作り職人であると同時に、それを取り扱う商人であり、ぶどう畑も所有していました。創立者は小さい頃から、ぶどう畑で遊び、また刈り入れなどの手伝いもしていましたので、ぶどうの木についてよく知っていましたし、どのようにぶどうが栽培されるかということにも通じていた違いありません。フランスのぶどうは、日本とは異なり、80cmくらいの高さの木で、棚にはせず、畑にずらりと等間隔に植えて育てます。ぶどう栽培は本当に手間がかかる作業です。枝を剪定して甘い実をつけるように手入れしなければなりませんし、時期はずれな寒波が押し寄せる時には、幾晩も幾晩も畑の土を暖めるものを木の列に従って、3mおきに置いていくのだそうです。根が勝手に横に伸びていかないように切り取り、下へ下へと深く伸びるように導くのも大事な作業です。見えている木の2倍の根が実は地中に伸びているのだという話を伺って、深い感動を覚えずにはいられませんでした。

創立者はこんなぶどうの木を目の当たりにしながら大きくなります。やがて16歳でパリに出ていき、シスターになる養成を受けた後、1800年、20歳で聖心会を創立することになります。そして、翌年にはアミアンで聖心女子学院が創設されます。このアミアンに始まり、ずっと聖心の教育で大切にしてきたのが「深く学ぶ」ということです。創立者はぶどう木が地面深く根をはってこそ甘い実を結ぶことができ、やがて人々を喜ばせることのできるワインになっていくのだということをよく知っていたことでしょう。この「深く伸びる根」のイメージが聖心の教育の根本にあるのだということに気づかされました。

「深い学び」とは、学んでいる内容に自分にとっての意味や価値を見出すことができるような学びといえるのではないでしょうか。他人事ではなく自分事として学ぶ姿勢から生まれてきます。そして、自分はどういう人間になりたいのか、どういう生き方をしたいのかということを考える助けとなり、しっかりと自分の足で立てる人になるためのエネルギーを与えてくれるような学びこそ、「深い学び」であると思います。

聖マグダレナ・ソフィアの考え方・生き方の根本が、あのジョアニーでの生活にあったように、小さい時の日常生活の一コマ一コマが「深い学び」につながっているということを確信し、また子供たちの成長を見守って参りたいと思います。

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